新しいことを理解して、こなすのに必死な毎日。
緊張感が続き、疲弊する日々。
「一体どうなってしまうんだろう」
先の見えない不安が、ただただ怖かった。
自分の理想の生き方を定めたあとで、
再び昔のような生き方に戻ってしまうかもしれない――
その想像は、夢を描いたぶんだけ、余計に痛みを伴っていた。
にっちもさっちもいかない中でも、
目の前のことをこなすためにひたすら手を動かしながら、
これからの道筋を考え続けた。
そんな日々のなか、ふとした瞬間に気づいたことがある。
――日常を感じ取れる時間が、少しずつ戻ってきている。
「次はこれ、その次は……」と未来ばかり追いかけていた時間のなかに、
「すこしだけ気分転換しよう」と立ち止まる余白が生まれてきた。
「明日はあれとあれをして」と先のことばかり考えていたお風呂の時間に、
「今日は温かいお湯が気持ちいいな」と
今この瞬間を味わう感覚が戻ってきた。
ようやく、待ち望んでいた日常の感覚が
手の中に少しずつ戻ってきた。
そのなんとも言えない安らぎに、心が深く息をつく。
「あぁそう、こういう感覚だった」
――あの静けさが、帰ってきた。
一度心の中で大切に育て始めたものは、
周囲の環境がどんなに大きく変わっても、ちゃんと自分の中にある。
見えなくなることはあっても、決してなくなることはない。


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